2025.12.15
任意整理
借金の解決と離婚はどちらが先?任意整理(債務整理)の相談について解説

配偶者の借金が発覚した場合に「離婚すれば、この苦しみから解放されるの?」そう考えるのは、ごく自然なことかもしれません。しかし、法律上、離婚が借金問題の万能薬となるわけではありません。時には離婚後も支払いの義務が残ったり、かえって生活基盤が不安定になったりするケースも少なくないものです。
この記事では、法的な側面から借金と離婚の関係を整理し、任意整理の進め方や相談時に押さえておきたいポイントについて解説します。
配偶者の借金発覚!まず何をすべき?

夫や妻の借金が発覚したとき、感情的になってしまうのは無理もないことです。しかし、今後の対応を間違えないためには、まず「事実を正確に把握する」ことが何よりも重要になります。感情的に相手を責める前に、落ち着いて以下の内容を確認してください。これらの情報が、今後の対応の方向性を決める鍵となるはずです。
借金の総額と借入先を明確にする
最初に把握すべきは、借金がいくらあるのか、そしてどこから借りているのかという2点です。
配偶者が複数の金融機関やクレジットカード会社から借り入れをしている場合、本人も全体像を正確に把握できていないケースも珍しくありません。契約書や明細書、督促状、通帳の履歴などをすべて集め、リストアップすることから始めましょう。
例えば、消費者金融A社から50万円、クレジットカードB社のキャッシング枠で30万円、さらに友人から20万円といったように、借入先ごとに整理することで、全体の債務額と返済の優先順位が見えてきます。
また、借入先が銀行や信販会社などの正規の金融機関か、あるいは貸金業登録のない業者(いわゆる闇金)なのかによって、対応の緊急度も変わってきます。もし闇金からの借り入れが含まれている場合は、早急に弁護士や司法書士への相談が必要です。
借金の原因と使途を聞く
次に確認したいのは、なぜ借金をしたのか、そして何に使ったのかという点です。
借金の理由は人それぞれですが、よくあるケースとしては次のようなものがあります。
・生活費の補填(収入減少や支出増加による赤字補填)
・ギャンブルや投資の失敗による損失補填
・交際費や趣味、娯楽への過剰な支出
・別の借金の返済に充てるための借り入れ(多重債務化)
・事業資金の補填(個人事業主や自営業者の場合)
例えば、収入が減って生活費が不足し、やむを得ず借金をした場合と、ギャンブルにのめり込んで借金を繰り返している場合では、再発防止策がまったく異なります。前者であれば家計の見直しや収入の安定化が課題となるのに対して、後者であれば依存症の治療や専門機関への相談が必要になることもあるかもしれません。
原因を明らかにすることは、責任を追及するためではなく、同じことを繰り返さないための対策を考えるためです。配偶者が話しづらそうにしている場合でも、感情的にならず、冷静に事実を聞き出すよう心がけてみてください。
返済状況と延滞の有無を確認する
借金があるだけでなく、すでに返済が滞っているかどうかも重要なポイントです。もし延滞が続いている場合、以下のような事態に進行している可能性があります。
・遅延損害金が発生し、借金総額が膨らんでいる
・信用情報機関に延滞情報が登録され、いわゆる「ブラックリスト」状態になっている
・督促の電話や郵便物が自宅に届いている
・最悪の場合、訴訟や差し押さえの手続きが進んでいる
例えば、クレジットカードの返済を3か月以上滞納すると、カード会社から一括返済を求められることがあります。さらに放置すれば、裁判所を通じた支払督促や訴訟に発展し、最終的には給与や預金口座が差し押さえられることも否定できません。
もし督促状や裁判所からの通知が届いている場合は、決して無視せず、速やかに専門家へ相談することが重要です。対応が遅れるほど、選択肢が狭まり、状況は悪化してしまいます。
「離婚すれば借金から解放される」は本当?法的な側面から現実を知る

配偶者の借金問題が発覚したとき、「離婚してしまえば、借金の責任から逃れられるのではないか」と考える方は多いものです。しかし、法律の世界では離婚と借金の関係は単純ではありません。ここでは、離婚と借金との関係について解説します。
任意整理とは何か|基本的な仕組みと特徴
任意整理とは、借金の返済が難しくなった場合に、裁判所を通さず、債権者(銀行や消費者金融など)と直接交渉して返済条件を見直す債務整理の方法です。主に、将来利息や遅延損害金をカットし、元本を分割で返済することで、毎月の返済負担を軽減することを目的としています。
任意整理の基本的な特徴は、次のとおりです。
・将来利息や遅延損害金のカットを目指せる
・返済期間を3〜5年程度に延ばせる
・整理する借金を選べる(住宅ローンや車のローンを除外可能)
・裁判所を使わないため、手続きが比較的簡素で周囲に知られにくい
一方で、信用情報に事故情報が登録されるため、一定期間は新たな借入やクレジットカードの利用が制限される点には注意が必要です。
配偶者の借金との関係は、原則として、配偶者が個人的に負った借金は、夫婦の相手であるあなたに返済義務はありません。そのため、任意整理をしても、配偶者の信用情報に直接影響が及ぶことはありません。ただし、連帯保証人になっている場合や、夫婦共有名義の借金がある場合は別途対応が必要です。
また、借金問題が原因で離婚を検討するケースも少なくありません。任意整理は離婚前・離婚後のいずれでも可能ですが、財産分与や生活費の分担に影響することがあるため、離婚と借金整理のどちらを先に進めるかは慎重に判断することが重要です。
結婚前の借金と結婚後の借金|離婚時の責任の違い
離婚によって借金の返済義務がなくなるかどうかは、「その借金がいつ、どのような目的で作られたか」によって大きく異なります。この点を正しく理解していないと、離婚後も予期せぬ形で支払い義務が残る可能性があります。
結婚前に配偶者が負っていた借金は、法律上「個人の債務(民法762条1項)」とされ、他方の配偶者には原則として返済義務はありません。例えば、夫が独身時代にギャンブルで200万円の借金をしていたとしても、妻が連帯保証人などとして法的に責任を負う立場でない限り、妻に返済義務は生じません。離婚の有無にかかわらず、この借金は夫個人のものとみなされます。
一方、結婚後に夫婦の生活のために作られた借金については、事情が異なるものです。例えば、生活費の補填や子どもの教育費、住宅の購入費など、夫婦の共同生活に通常必要な出費のために負った債務は、「日常家事債務(民法761条)」として、夫婦双方が連帯して責任を負う場合があります。 この場合、借金をした一方の配偶者だけでなく、他方の配偶者にも返済義務が生じる可能性があるため注意が必要です。
具体的な例を挙げると、夫が家族の生活費として消費者金融から100万円を借り入れ、それを食費や光熱費に充てていた場合、その借金は家計に用いられたとして、妻にも返済義務を求められる可能性があります。 もっとも、ギャンブル、浪費、遊興費のように「日常家事の範囲を超える支出」や、配偶者に無断で行った借金は原則として日常家事債務に該当せず、通常、妻には返済義務が生じることはありません。
また、借金そのものよりも、配偶者が借金の事実を隠していたり、浪費やギャンブルを繰り返したりする「金銭感覚や生活態度の不一致」が、夫婦関係の破綻を招き、離婚に至る例も少なくありません。借金問題は、経済的な側面だけでなく、夫婦間の信頼関係に深く関わる重大な要因といえるでしょう。
夫婦の借金問題が離婚に発展する典型パターン
夫婦の借金問題は、放置すると信頼関係を大きく損ない、離婚に発展する典型パターンがいくつか見られます。問題の本質は「金額」だけでなく、「隠し方」「向き合い方」にあることが少なくありません。
1.借金の隠蔽が発覚するケース
まず多いのが、借金の隠蔽が発覚するケースです。カードローンやキャッシングを配偶者に黙って重ね、督促状や信用情報のトラブルで判明すると、「裏切られた」という感情が強くなり、関係修復が難しくなります。特にギャンブルや浪費が原因の場合、再発への不安が離婚の引き金になりがちです。
2.連帯保証・共有名義が原因で責任が拡大するケース
次に、連帯保証・共有名義が原因で責任が拡大するケースです。配偶者が連帯保証人になっていたり、住宅ローンや事業資金が共有名義だったりすると、借金が一方の問題にとどまらず、家計全体を直撃します。返済方針を巡る意見対立が深まり、離婚に至ることがあります。
3.返済不能による生活破綻
三つ目は、返済不能による生活破綻です。返済を優先するあまり生活費が不足し、家賃・光熱費・教育費に支障が出ると、日常のストレスが増大します。話し合いが感情的になり、関係悪化が加速します。
4.対策の遅れ
対策の遅れも典型的な要因といえます。任意整理などの債務整理を検討できたにもかかわらず、相談を先延ばしにした結果、差押えや一括請求に発展し、信頼が崩れるケースもあります。
離婚を避けるためには、以下のようなポイントも重要です。
・早期に状況を共有し、事実を隠さない
・任意整理など現実的な解決策を専門家と検討する
・再発防止策(家計管理・依存対策)を具体化する
借金問題は、向き合い方次第で結果が変わるテーマです。感情がこじれる前に、冷静な話し合いと専門家への相談を行うことが、夫婦関係を守る第一歩となります。
離婚しても残る借金責任|知らないと危険な3つのケース

配偶者の借金が発覚したとき、「離婚すれば関係なくなる」と考えてしまいがちです。しかし実際には、離婚後も借金の返済責任が残るケースがあり、知らずに離婚届を出してしまうと、後になって債権者から突然請求が来て驚く事態になりかねません。特に以下の3つのケースでは、離婚したからといって責任を免れるわけではないため、事前の知識と対策が不可欠です。
ケース1:連帯保証人になっている場合のリスク
連帯保証人とは、主債務者(借金をした本人)が返済できなくなった場合に、主債務者と同等の立場で返済義務を負う者を指します。連帯保証人は、通常の保証人と異なり、「催告の抗弁権」や「検索の抗弁権」(民法452条・453条に相当する旧条文上の規定)を行使できません。したがって、債権者は主債務者に請求するよりも先に、連帯保証人に対していきなり全額の支払いを請求することができます。
例えば、夫が事業資金として銀行から500万円を借りる際、妻が連帯保証人になっていたとします。その後、夫の事業が失敗して返済不能となり、さらに夫婦が離婚したとしても、妻の連帯保証契約はそのまま残ります。離婚によって連帯保証責任が消滅することはありません。夫が返済を怠れば、債権者は妻に対して残債の全額を請求することが法的に可能であり、妻はこれを拒むことはできません。
また、離婚協議書や公正証書に「今後は元夫が全額返済する」と定めても、それはあくまで夫婦間の内部的な取り決めに過ぎません。債権者(銀行や金融機関)に対しては法的効力を持たないため、妻は依然として契約上の連帯保証責任を負うことになります。元夫が返済を滞らせた場合、債権者は妻に法的措置を取ることができ、最悪の場合、給与の差押えや不動産の競売などの強制執行に至るケースもあります。
このようなリスクを回避するためには、離婚前に「連帯保証人からの解除」を債権者に申し入れる必要があります。ただし、連帯保証契約は債権者の承諾がない限り一方的に解除できません。実際には、代わりの保証人を立てる、債務を一括返済して契約を終了させる、あるいは借り換えによって新たな契約を結ぶなどの方法を検討する必要があります。
ケース2:住宅ローンや共有財産がある場合の注意点
夫婦で住宅ローンを組んでいる場合、離婚後の責任関係は非常に複雑になります。住宅ローンの契約形態には主に「連帯債務」「連帯保証」「ペアローン」の3種類があり、それぞれで離婚後の返済義務の残り方が異なります。
連帯債務の場合、夫婦がそれぞれ債務の全額について責任を負うため、離婚後も双方に返済義務が残ります。一方が返済を怠れば、金融機関はもう一方に対して全額の支払いを求めることができます。
例えば、夫婦で3,000万円の住宅ローンを「連帯債務」として契約し、離婚後に夫が家に住み続けてローンを支払う約束をしたとします。離婚協議書にその取り決めを明記していても、金融機関との契約関係には影響しません。後に夫が失業して返済を滞らせた場合、金融機関は妻に対しても返済を請求することができます。妻がすでに家に住んでいなくても、連帯債務者としての法的義務が残るからです。滞納が続けば、債権者が妻の給与を差し押さえたり、住宅を競売にかけて残債請求を行うこともあり得ます。
このようなリスクを避けるには、離婚前に住宅ローンの処理方法を明確に決めておくことが重要です。
主な解決策には、次のような方法があります。
①住宅を売却してローンを完済する方法
②一方が住宅を取得し、その者単独でローンを引き継ぐ方法
後者を選ぶ場合、金融機関に対して連帯債務や連帯保証の解除を求めることになりますが、残る側の収入や信用状況次第では、金融機関が同意しないことも多いのが実務上の現実です。
また、財産分与において住宅ローン残債をどう扱うかも重要な検討事項です。住宅の時価がローン残高を下回る、いわゆる「オーバーローン」の状態では、家の持分に実質的な価値がないため、財産分与の対象外とされることが一般的です。ただし、夫婦双方の生活費や住宅維持のために負担した債務などについては、「負の財産」として考慮され、分与の際に責任割合が調整されることもあります。
ケース3:生活費としての借金や財産分与時の落とし穴
婚姻中に生活費や子どもの教育費、医療費などを賄うために借金をすることがあります。このような債務のうち、夫婦の日常生活を維持するために通常必要とされる範囲のものは、民法761条に基づき「日常家事債務」として扱われます。この場合、その借金をどちらか一方の配偶者がしたものであっても、他方の配偶者にも返済責任が及ぶことがあります。
日常家事債務とは、婚姻共同生活の維持に一般的に必要とされる行為に基づく債務をいい、例えば食費、光熱費、子どもの教育費、医療費などが典型的な例とされています。
例えば、夫が家族の生活費を補うためにクレジットカードで50万円を借り入れ、その資金を実際に家計に充当していた場合、妻が事前に承諾していなくても、その債務が「日常家事債務」と認められれば、妻にも連帯して返済義務が生じる可能性があります。離婚後、夫が返済できなくなった場合、債権者が妻に支払いを求めることもあり得ます。
一方で、夫が趣味のギャンブル、投機的な投資、個人的な浪費のために負った借金については、通常「日常家事債務」には該当しません。このような場合、妻には返済義務は生じません。ただし、実際にその借金がどのような目的で使われたのかを判断するには、支出内容を客観的に示す必要があり、債権者が「生活費に使われた」と主張してくるケースもあります。そのため、領収書や明細書、通帳の記録などを保管し、借入金の使途を明確にしておくことが重要です。
また、財産分与の際にも注意が必要です。離婚協議書や公正証書で「借金は夫が全額負担する」と定めていても、それは夫婦間の内部的な合意に過ぎず、債権者に対しては効力を持ちません。元夫が返済を怠った場合、日常家事債務として認められる範囲については、元妻にも請求が及ぶ可能性があります。離婚前には、各借金の目的を明確にし、可能であれば完済してから離婚する、あるいは債権者と協議して責任の所在を明確にしておくことが望ましいといえます。
専門家への相談と解決までの流れ|弁護士?離婚カウンセラー?

借金問題から夫婦関係の悪化が重なると、「誰に相談すればいいのか」「どこから手を付ければいいのか」分からなくなる方は少なくありません。弁護士や司法書士といった法律の専門家に相談すべきなのか、それとも離婚カウンセラーなど心のケアを重視すべきなのか、判断に迷う場面も多いでしょう。ここでは、それぞれの専門家がどんな役割を果たすのか、そしてどんな順序で相談を進めていけばいいのか、解説していきます。
債務整理の専門家と離婚問題の専門家|どちらに相談すべきか
配偶者の借金が発覚したとき、まず頭に浮かぶのは「弁護士に相談しよう」という選択肢かもしれません。たしかに弁護士は法律の専門家であり、借金問題も離婚問題も法的に扱える立場にあります。ただ、一口に「弁護士」といっても、実際のところ得意分野は人それぞれです。債務整理に強い弁護士もいれば、離婚や家族法に詳しい弁護士もいますし、もちろん両方に精通している弁護士も存在します。
まず整理しておきたいのは、債務整理を専門とする弁護士や司法書士は、借金の減額や支払い計画の見直しなど、お金そのものの問題を解決する力を持っている、ということです。例えば「配偶者が500万円の借金を抱えていて、毎月の返済に追われている」という状況なら、任意整理や個人再生といった選択肢を提示し、具体的な解決策を示してくれます。
一方で、離婚カウンセラーや家族問題専門のカウンセラーは、心の整理や夫婦関係の見つめ直しに特化した専門家です。離婚を決断する前に、「本当に離婚すべきなのか」「やり直す道はないのか」といった葛藤を受け止め、感情の整理を手伝ってくれます。離婚を選ぶにしても、その後の生活設計や子どもへの影響など、法律の枠を超えた部分にまで寄り添ってくれるのが大きな特徴です。ただし、カウンセラーは法律行為を行えないため、離婚届の作成や財産分与の手続きといった実務には関与できません。
それでは、どちらに相談すべきかというと、まず自分が何に最も困っているのかを基準に考えるのが自然です。例えば「毎日の督促が怖くて仕方がない」「このままでは家計が破綻する」という切迫した経済的不安がある場合は、債務整理に強い弁護士や司法書士への相談が優先されます。逆に、「気持ちが整理できない」「離婚したいけど怖い」「夫婦関係を立て直したい気持ちもある」といった心情面での混乱が強い場合は、まず離婚カウンセラーに話を聞いてもらうのもひとつの方法です。
もっとも、多くのケースでは「借金問題も離婚問題も同時に抱えている」という状態でしょう。そうした場合には、両方の専門家に関わってもらうことが現実的な選択肢となります。
両方の問題を一人の弁護士に相談できるケース・できないケース
「借金も離婚も、どちらも法律問題なんだから、弁護士ならまとめて相談できるはず」
そう考えるのも自然なことです。実際、離婚問題と債務整理の両方を扱っている弁護士も存在し、ひとりの弁護士に一貫して相談できれば、話の流れもスムーズです。費用の面でもメリットと言えるかもしれません。ただし、すべてのケースで「ひとりの弁護士に全部任せられる」わけではないことも、あらかじめ知っておきましょう。
まず、ひとりの弁護士に両方を任せられるケースとしては、以下のような状況が考えられます。
・夫婦双方が協力的に問題解決を目指している場合
例えば、夫が自分の借金を認め、妻も含めた家計全体の立て直しに前向きなとき。離婚は視野に入れつつも、まずは経済的な再建を優先したいという状況では、債務整理と離婚準備を並行して進めることが可能です。
・離婚を前提とした財産整理が目的である場合
離婚を決めている夫婦が、財産分与や慰謝料の計算をする際、借金の存在が大きく影響するケースです。この場合、弁護士は離婚手続きの中で債務の取り扱いを整理し、どちらがどれだけ負担するかを法的に決めていく役割を果たします。
一方で、ひとりの弁護士では対応が難しいケースもあります。
・夫婦が対立している場合
最もわかりやすいのは、夫婦が互いに対立し、それぞれが自分の権利を主張したいと考えているケースです。この場合、ひとりの弁護士が両方の味方になることはできません。なぜなら、弁護士は「依頼者の利益を守る」立場であり、利益相反となる行為は倫理的に禁じられているからです。
・借金が夫婦双方に影響しているが、責任の所在が不明瞭な場合
例えば、夫名義の借金であっても妻が連帯保証人になっている場合や、生活費として夫婦で使い込んでしまった借金がある場合など、「誰の責任か」が明確でないケースです。こうした状況では、債務整理の方針と離婚の方針が複雑に絡み合うため、それぞれの専門家に分けて相談するほうが安全でしょう。
弁護士自身の専門性も重要な要素です。債務整理に強い弁護士が離婚問題にも対応してくれるかというと、必ずしもそうではありません。ですから、相談する際には「両方に対応できますか?」と率直に確認してみることが大切です。
両方の専門家に相談する場合のタイミングと順序
では、実際に「債務整理の専門家」と「離婚の専門家(または離婚カウンセラー)」の両方に相談する場合、どんな順序で進めていくのが自然でしょうか。
パターン1: まず債務整理の専門家に相談するケース
「借金の督促が止まらない」「このままでは生活が立ち行かなくなる」という緊急性が高い場合には、まず債務整理を専門とする弁護士や司法書士に相談するのが現実的です。借金問題を放置すると、差し押さえや強制執行といったリスクが迫ってくるため、とにかく止血を優先するかのような対応が重視されます。
債務整理の専門家に相談の上、正式に依頼すると、まず「受任通知」を債権者に送ります。この通知が債権者に届くことで、一時的に督促が止まり、精神的にも少し余裕が生まれるはずです。このタイミングで、弁護士に「実は離婚も考えている」と伝えておくのも効果的です。
パターン2: まず離婚カウンセラーや家族問題の相談窓口に相談するケース
逆に、「借金はあるけれど、まだ督促が激しいわけではない」「むしろ、自分の気持ちが整理できない」という状況であれば、先に離婚カウンセラーや自治体の相談窓口に話を聞いてもらうのもひとつの選択肢です。
離婚カウンセラーとの対話を通じて、「本当に離婚したいのか」「やり直す余地はあるのか」といった自分の本音に気づくことがあります。もし「やはり離婚したい」という結論に至れば、その時点で弁護士に相談することも可能です。一方、「もう少し夫婦でやり直してみたい」と思えるなら、夫婦カウンセリングや家計の見直しといった別のアプローチもあります。ただし、借金問題を放置しすぎないよう、並行して債務整理の専門家にも相談しておくことが理想的です。
パターン3: 両方の専門家にほぼ同時に相談するケース
現実的には、「借金も離婚も、どちらも待ったなしの状況」という方も少なくありません。その場合は、債務整理の弁護士と、離婚専門の弁護士(またはカウンセラー)に、ほぼ同時期に相談することになります。
この場合の注意点は、それぞれの専門家に「もう一方の専門家にも相談している」と伝えておくことです。そうすることで、例えば債務整理の方針が離婚の財産分与に影響する場合に、専門家同士が連携しやすくなります。
相談の際に準備しておくとよいもの
どの専門家に相談するにしても、以下のような情報や書類をあらかじめ整理しておくと、スムーズに話が進みます。
・配偶者の借金の総額、借入先、返済状況がわかる資料(通帳、請求書、督促状など)
・夫婦の収入や生活費の内訳(家計簿や給与明細)
・結婚してからの財産の状況(不動産、預貯金、車など)
・子どもがいる場合は、親権や養育費に関する希望
・自分自身の気持ちや不安をメモしたもの(カウンセラーへの相談時に役立ちます)
完璧に揃えなくても大丈夫です。「わからないことだらけで不安」という状態であっても、専門家はそこから一緒に整理してくれます。大切なのは、「ひとりで抱え込まない」ということです。
離婚せずに借金問題を解決する具体的な方法

借金という問題は、適切な解決方法を知ることで、離婚せずに乗り越えられる可能性も十分にあります。
借金問題を解決するためには、まず「どんな方法があるのか」を知り、「夫婦でどう協力するか」を考え、そして「家計と信頼をどう再建するか」という3つのステップを踏んでいくことが重要です。
任意整理・個人再生・自己破産の選択基準と比較
借金を整理する方法には、大きく分けて「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3つがあります。それぞれの制度には、メリットとデメリットがあり、どの方法を選ぶかは、借金の総額、安定した収入の有無、財産の状況、そして何より「これからどう生活を立て直したいか」という家族の希望によって決まります。
ここでは、それぞれの特徴を比較してみましょう。
任意整理
特徴
・弁護士や司法書士が債権者と直接交渉し、将来利息のカットや返済期間の延長を目指す方法
・裁判所を通さないため、手続きが比較的シンプル
・安定した収入があり、借金総額が比較的少ない方(目安200万円前後まで)に適している
メリット
・将来利息のカットや返済期間の延長により、返済負担を軽減できる
・裁判所を利用しないため、家族や職場に知られにくい
・整理する借金を選べる(住宅ローンなどを除外可能)
デメリット
・元金は原則として減額されない
・信用情報機関に事故情報が登録される(約5年間)
・債権者の合意が必要で、交渉が成立しない場合もある
個人再生
特徴
・裁判所を通じて借金の総額を大幅に減額する手続き
・減額後の借金を原則3〜5年で分割返済する
・住宅ローンを支払い中の持ち家を残したい方
・安定した収入がある方(正社員、パート・アルバイトも可)に適している
メリット
・借金を大幅に減額できる(最大9割程度)
・住宅ローン特則を利用すれば、マイホームを手放さずに済む
・ギャンブルや浪費が原因の借金も対象となる
デメリット
・手続きが複雑で、時間と手間がかかる
・信用情報機関に事故情報が登録される(約5〜10年間)
・官報に氏名・住所が掲載される
自己破産
特徴
・裁判所に申し立てを行い、借金の返済義務を免除してもらう手続き
・返済能力がないと認められれば、借金をゼロにできる
・収入がほとんどなく、返済の見込みが立たない方
・財産は少ないが、ゼロから再出発したい方に適している
メリット
・借金が原則すべて免除される(税金など一部を除く)
・経済的に再スタートを切れる
デメリット
・一定以上の価値がある財産(家・車など)は手放す必要がある
・信用情報機関に事故情報が登録される(約10年間)
・官報に氏名・住所が掲載される
・一部の職業に一定期間就けない制限がある
・ギャンブルや浪費が原因の場合、免責が認められないケースもある
どの方法を選ぶべきか迷ったときは、まず専門家へ相談することをおすすめします。
夫婦で協力して債務整理を成功させる秘訣
借金問題を解決するうえで大切なのは、制度の理解だけではありません。最も重要なのは、「夫婦で協力して取り組む姿勢」です。どれほど適切な債務整理の方法を選んでも、夫婦がお互いに不信感を抱いたままでは解決は難しくなります。反対に、気持ちを一つにして支え合えば、借金問題を乗り越える過程で家族の絆が深まることもあります。
まず大切なのは、「隠さず、正直に話すこと」です。借金の事実を明かすのは勇気のいることですが、隠し事があると相手に不信感を与え、関係修復が遠のいてしまいます。借金をした側には「すべてを打ち明ける覚悟」が求められます。
配偶者の側も、感情的に責める前に「なぜそうなったのか」を冷静に聞く姿勢が必要です。収入減、病気、仕事のストレスなど、背景には必ず理由があります。もちろん借金自体は軽い問題ではありませんが、「責める」より「理解しようとする」ことが、次の行動への第一歩になります。
次に意識したいのは、「専門家に夫婦で相談すること」です。弁護士や司法書士の面談に二人で参加すれば、手続き内容を正しく理解できるだけでなく、情報のずれや不安を共有しやすくなります。特に任意整理や個人再生、自己破産などの手続きは、家計全体への影響が大きいため、夫婦双方の同意と理解が不可欠です。
さらに、手続き中は「役割分担」を明確にしましょう。書類の準備、専門家とのやり取り、家計管理の担当などをあらかじめ決めておくことで、一方に負担が集中するのを防げます。また、お互いの信頼を保つうえでも、定期的な報告と確認を行うことが有効です。
そして最後に、債務整理の過程では「小さな成功を共有すること」を忘れないでください。毎月の返済を滞りなく続けられたとき、貯金が少しずつ増えたとき、家族に笑顔が戻ったとき——そうした積み重ねが、前向きに進む力になります。「少しずつでも確実に前に進んでいる」という実感が、夫婦にとって最大の支えになるはずです。
まとめ

配偶者の借金問題から離婚を考えるとき、「借金の解決を先にすべきか、離婚を先に進めるべきか」悩むところかもしれません。離婚すれば借金の影響から逃れられると考えるかもしれませんが、結論は一律ではなく、状況によって最適な順序は変わります。
まず、任意整理などの債務整理は、本人の借金を整理する手続きであり、原則として配偶者の信用情報に直接影響はありません。ただし、連帯保証人になっている場合や、共有名義のローンがある場合は注意が必要です。こうしたケースでは、借金整理の内容が離婚条件(財産分与・養育費・生活費)に影響することがあります。
一般的には、離婚前に借金の全体像を把握し、任意整理の可否を検討することが重要です。返済額が減り生活再建の見通しが立てば、離婚を回避できるケースもあります。一方で、別居や離婚を急ぐあまり借金整理を後回しにすると、返済が滞り、交渉条件が悪化するおそれがあります。
ただし、DVやモラハラ等、深刻な不和がある場合は、安全や生活の確保を最優先にし、離婚を先に進める判断も合理的です。その場合でも、早期に専門家へ相談し、離婚後の返済計画を含めて整理しておくことが欠かせません。
アヴァンス法務事務所では、女性専用の相談窓口を用意しており、全国から24時間、電話やメールでのご相談を無料で受付しております。借金問題は時間が経過することで、選択肢が狭まってしまうこともあります。まずはお気軽にご相談ください。





